全盲と偽り札幌市から生活保護費の障害者加算分約二百万円を詐取したとして、詐欺容疑で逮捕された札幌市南区の無職丸山伸一容疑者(50)が、点字タイプライターを使いこなすなどの偽装工作をし、盲導犬を利用した時期もあったことが、二十九日までに分かった。丸山容疑者は同市から訪問介護などの福祉サービスも受け、市に経費約六百万円を支出させたとみられており、札幌南署はこれらが不正受給に当たる可能性があるとみて裏付け捜査を進めている。
「今では本を読んでいるんだ」と捜査関係者があきれて話す。丸山容疑者が留置場で小さな字の本を手にし、読みふけっていたという。十年近く、目が見えない演技をしていた同容疑者は、調べに「目はずっと見えていた」と供述している。
同容疑者は一九九九年、ほぼ全盲とされる視覚障害一級に認定されて身体障害者手帳を取得し、二〇〇三年十月から今年二月まで障害者加算額約二百万円を詐取したとされる。
札幌市などによると、同容疑者は〇二年から居宅介護や外出介助などの福祉サービスを受けていた。点字タイプライター、白いつえ、電子調理器などの障害者用日用品や公共交通機関の全額補助券も支給され、総額は約六百万円に上るという。
外出介助や食事の支度などのサービスも週三回ほど受け、点字タイプを使いこなし、ヘルパーに点字を教えることもあったという。食事の際には、ジャガイモの芽や皮を取らないまま、ゆでて食べるなど、目が見えないふりをした。担当していた七十代の男性ヘルパーは「急に道路に飛び出すこともあり、目が見えていたとは信じられない」と絶句する。
同容疑者は〇四年七月から〇五年十月にかけて、盲導犬も借りていた。「本当に支援が必要な視覚障害者にとって悲しい事件」。北海道盲導犬協会の和田孝文所長は憤る。
一連の詐欺を始めたきっかけを同容疑者は「以前、同居していた知人から『全盲と偽れば金がもらえる』と聞き、思いついた」と供述している。
「交通事故にあって目が見えなくなった」。同容疑者の言い分に添う形で、札幌市内の開業医は「ほぼ全盲」との診断書を出した。この医師は「診断方法は覚えていないが、目が見えないと困った人が来れば疑わないのが普通」と弁明する。
結局、同容疑者は〇二年と昨年の秋に運転免許を更新し、一定の視力があったことが証明されたため、事件が発覚した。同容疑者は車を所有していなかったが「免許が失効すれば、取り直すのが大変だから」と説明しているという。
同容疑者は「見えないと言えば、簡単に手帳がもらえた」とも供述し、札幌市の審査のずさんさを語る。これに対し、同市は「医師の診断書もあり、疑えなかった。今後は関係者と連絡を徹底し、不正防止に努めたい」(南区保健福祉部)としている。
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