2008年3月14日金曜日

ゴジラ(3月14日)

スペースシャトルに乗った土井隆雄さんは映画「ゴジラ」のテーマ曲で目を覚ました。釧路に生まれ札幌で学んだ作曲家・伊福部昭(いふくべあきら)さんの作品だ。この曲は出だしから緊張感がある▼それは、あの映画が単なる怪獣ものではないからでもあろう。南の海にひそんでいた太古の生物が、水爆による放射線で怪獣になった。そんな設定だ。公開された一九五四年は、漁船「第五福竜丸」が水爆実験で死の灰を浴びた年である▼だから、映画には核兵器や戦争の愚かさを伝える思いが込められている。ゴジラが都会のビルを壊すのも、科学技術への復讐(ふくしゅう)らしい。漫画「鉄腕アトム」が科学への信頼に軸足を置いたのとは対照的だ▼科学への警鐘のテーマ曲が、科学の粋を集めるシャトルで流れる。「宇宙計画イコール人類の夢」の時代が様変わりした象徴か。確かにシャトルが生んだのは夢だけではない。地上の精密な立体地形図は、巡航ミサイルでのイラク攻撃に使われた、と指摘される▼いま科学万能の風潮に反発は強い。そこには行き過ぎもある。心霊現象やら霊能力やらが安直にもてはやされる。根拠がないものほど人が引きつけられる。霊感商法は減らない。現代社会の弱みだろう▼科学の暴走を戒めつつ、ものを知ることの力を信じる。そこから「きぼう」が生まれる。宇宙に響くゴジラのメロディーが、そんなメッセージに聞こえた。

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