2008年3月3日月曜日

人工湿地で酪農排水浄化 北農研、北大など新システム開発 6月に別海で実用化

北海道農業研究センター(札幌)や北大などで構成された道内の産学官研究チームが、人工湿地で酪農排水をろ過し、河川に流しても問題ない水準まで浄化する国内初のシステムを開発した。高濃度の酪農排水を低コストで通年処理でき、効果が半永久的なのが利点で、六月に根室管内別海町の酪農家で実用化される。(報道本部 拝原稔)
 牛舎から出る洗浄水や廃棄乳などの酪農排水は、生物化学的酸素要求量(BOD)が高濃度で、直接川に流すと環境汚染のもとになる。堆肥(たいひ)化するふん尿とは別に処理されている場合が多いが、普及している浄化機器は初期投資に数千万円が必要な上、運用経費も月十万円以上かかり、酪農家を悩ませている。
 同センターや北大、酪農資材販売の「たすく」(根室管内中標津町)、道立根釧農試(同)が、二○○五年秋から別海町や留萌管内遠別町で研究に着手。道内に多い乳牛百頭規模の場合、建設費約七百万円、維持費が電気代など月に二万円以下で済む新システムを開発した。
 人工湿地は軽石を敷き詰めた深さ約一メートル、五百平方メートル前後で、段々畑のように四段造り、排水を下段に流しながらろ過する。とらえた有機物や大腸菌、アンモニアなどは地中微生物の力で分解。処理前と比べBODが95%、リンと窒素は各80%浄化でき、河川に放出できる水準にする。
 湿地には酪農排水の中でも成長できるヨシを植え、地下茎や芽の成長によって水の通り道をつくり、目詰まりを防ぐ役割を担わせる。リンは三、四段目の間に設置した炭酸カルシウムの吸着ますで回収して肥料にする。
 軽石の上に敷いた特殊な断熱材と、均等に排水を流してすぐに浸透させるための自動ポンプ装置を配置することで、冬場の凍結を克服したという。
 総工費約千五百万円をかけ、約四千平方メートルの新システムを建設中の中山農場(別海町、乳牛三百頭規模)は「電気代などが安く済み、自然の力で浄化できる利点にひかれた」。開発を主導した同センターの加藤邦彦主任研究員(43)は「道内の酪農家に普及し、環境向上に寄与できれば」と話している。

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