元小樽工業高ボート部顧問で昨年亡くなった坂下五郎さん=札幌市=の遺稿集が刊行された。長年にわたる人材育成の経験をまとめた「実践から生まれた新人教育小論集」。遺族が自費出版の形で世に出した。ボート関係者は「ボートマンらしい厳しさと温かさがにじむ」と話している。
坂下さんは一九六○年代半ばに小樽千秋高(現小樽工業高)に赴任。北大在学中のボート経験を生かして顧問不在だったボート部を率い、七○年代には全国大会上位入賞の常連に導いた。全国高体連漕艇部強化委員長も務めた。
退職後も札幌の日用品卸「ダイカ」で研修室長を務めるなど、人材育成一筋。経験を書き残そうとしていた昨年秋、がんを再発した。急きょ、ダイカ広報誌の連載をまとめたが、十一月、刊行を待たずに七十四歳で死去。前書きが絶筆となった。
遺稿集は、上司を嘆かせる新人の行動に潜む“価値観のギャップ”を解説。「日本の伝統的勤労観を失った若者が、他人のためにという気持ちを持ったときが第一歩」と、見守り方や働きかけ方を指南している。
「利他的思考の強さを説く言葉に、五人一体で力を発揮するボート競技の経験がにじむ」と、小樽漕艇協会の柳内敦会長(63)。「市民レガッタにも尽力、小樽ボート界の精神的支柱だった。遺志を継いで普及活動を続けたい」と話している。
五百部発行。小樽市稲穂一の丸文書店イナホ店で発売中。二千円。
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